11月11日は《光棍節(独身の日)》:中国語の《単身》に恋人のいる独身が含まれない話

11月11日は何の日? 日本で認知度の最も高いのは「ポッキーの日」だろうか。しかし、2018年11月11日の朝日新聞には「ポッキーの日」の文字はいっさいなく、「介護の日」「イレブンの日(BS11)」の文字が踊っている。日本記念日協会によると11月11日は46件もの記念日登録があるらしい。

2015年に始まった Yahoo! ショッピングの仕掛ける「いい買い物の日」は46件の中には入っていない。2009年に中国のアリババグループが「《光棍節》にはネットショッピング!」というキャンペーンを始め、毎年大きく売り上げを伸ばしている。それをYahoo!が11月11日に「いい」を掛け「いい買い物の日」として輸入したものだ。

さて、この《光棍節》は別名《単身節》とも言われ、「独身の日」という意味である。『日経ビジネスオンライン』(2009)によると

中国語で“光棍”は「樹皮を剥いて作られた棍棒」を意味し、これでは後世に樹木の子孫を残すことはできないことから転じて「独身者」を表す。

「裸の木の棒」が「独身であること」を指すわけだが、これは主に男性を指し、『白水社中国語辞典』には「男やもめ」という訳語もあった。1ばかりが4つも並ぶこの日は確かに「独身者」が集まっているように見える。

この「独身の日」歴史はそう古くない。1990年代に大学生たちの間で彼氏彼女のいないことが自虐的に祝われるようになり、それが徐々に広まっていったらしい。この日は独身者が集まって祝うこともあるが、最近は自宅にこもって自分にご褒美をと、ネットショッピングをする人が増えたことから、ネット上でディスカウントセールが始まったらしい。

「独身の日」がすっかり浸透してしまったせいだろうか、「独身」という語に「恋人のいる独身者は含まれない」と思い込む中国人が増えている。「独身」は「結婚していない人」なのだから、恋人がいて婚約中の人も「独身」だと言うと意外な顔をする。

フランスのように結婚と言う法的手続きを経ない事実婚カップルが結婚している夫婦よりも多いのなら、わからなくもない。「独身」という言葉はきっと意味をなさなくなる。だが、中国はまだそこまで事実婚が一般的ではないはずである。

同様に《第三者》、日本語でいう「愛人」という語の使い方も奇妙だ。正式に結婚していない場合にも二股をかけると《第三者》という語が使われる。

そんなバカげた思い込みをいちいち指摘しなければならないことに少々疲れている私である。

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